「川崎市子ども夢パーク」及び「フリースペースえん」における子ども・若者たちの自己肯定感を育む居場所事業

プロジェクトの概要

昼食風景 昼食風景

1986 年より代表の西野が、不登校児童生徒や高校中退した若者、ひきこもり傾向にある若者たち、さまざまな障がいのある人たちとともに地域で育ちあう居場所づくりに携わる。

 

1991 年からは、川崎市高津区にフリースペースたまりばを開設。

 

2003 年からは、「川崎市子ども夢パーク」内に公設民営の居場所「フリースペースえん」を開設・運営。

 

2006 年からは、指定管理者として『川崎市子どもの権利に関する条例(2000 年制定)』の具現化を目指し作られた施設「川崎市子ども夢パーク」全体の管理・運営を行なっている。ここを拠点として、子ども・若者たちが集う学校外の暮らしと学びの場を展開している。

取り組みのねらい・目標

① 不登校・ひきこもりの子ども・若者たちの自己肯定感や自尊感情を育む居場所づくりと権利保障
② 安心して失敗できる環境の中での多様な学びの実現
③ 貧困世帯の子どもたちが無償で通える場の実現
④ 障害の有無や国籍の違いなどにとらわれず、誰もが通える多文化共生の場の実現
⑤ 子育ての悩みを抱える保護者への相談援助活動
⑥ 子ども参加の促進(子どもの意思決定への参画)
⑦ 「おいしい、うれしい、たのしい」を感じる食育活動
⑧ 自然エネルギーを学びながら使える居場所づくり
⑨ 安心して過ごせる地域づくり(子どもたちの地域参加)
⑩ 非暴力の文化を尊重した居場所づくり

達成度

様々な背景を持つ子ども・若者たちが集う居場所づくりの評価を数値化することは、とても難しいと考えている。居場所に通うことで、「自分はここにいていいんだ」「ひとりじゃない」という安心感を持てることが最優先であり、私たちの活動は子どもの「いのちをまん中」に置いた関わりを続けていくことにつきる。そのことが、多方面からの評価をいただいている私たちの実績だと考えている。

個別で言えば、小学校~中学校で不登校だった子どもが、居場所に通うことで本来の力を取り戻し、昨年度は高校進学を希望した中学3年生の8人中8人が高校進学を果たした。また、ひきこもりの若者に関しても、居場所に通うことで生活リズムができ、様々な活動に参加することで自信を取り戻し、就労支援ボランティアの面談を重ねて、就労体験から仕事につけたケースもある。常に子ども一人ひとりの最善の利益を目指し、上記の目標を達成できるように取り組み続けていきたい。

参加・連携・協力団体など

① 川崎市内外の子どもに関わる市民団体・NPO 等との連携
・川崎市生涯学習財団(指定管理者として川崎市子ども夢パークを共同運営)
・かわさきチャイルドライン(子どもの電話相談)、ままとんきっず(乳幼児親子支援)、青丘社(在住外国人支援)、カラカサン(外国からの移住女性・子どもの支援)、社会福祉法人青い鳥(発達障害者支援)、川崎水曜パトロールの会(ホームレス支援)、ジェントルハート(いじめ防止プログラム)、エンパワーメントかながわ(子どもへの暴力防止プログラム)、福島の子どもたちとともに~かわさき市民の会~(東北・福島の子ども支援)、かわさき市民共同おひさまプロジェクト(自然エネルギーの利用促進活動)、神奈川子ども未来ファンド(民間ファンド)、リロード(ひきこもり支援)、フリースクール東京シューレ、日本子どもソーシャルワーク協会(相談支援)、日本冒険遊び場づくり協会・プレーパーク世田谷(プレーパーク)、憩いの家(自立援助ホーム)、釜ヶ崎子どもの里・寿学童保育所(日雇い労働者の街での子ども支援)、クッキングハウス(心に病を持つ人たちの居場所)、つながるカフェ(心に病を持つ人たちの居場所)など

② 地元町内会・JA セレサ川崎との連携(意見交換会や農業フォーラムなどのイベント交流を通して安心して過ごせるつながりの実現)

③ 行政機関との連携
・川崎市立小・中・高校、川崎市教育委員会(人権共生教育、総合教育センター、「川崎市不登校対策連絡協議会」など)、川崎市市民こども局人権男女共同参画室、こども本部こども企画課・青少年育成課、川崎市児童相談所などとの連携
・神奈川県教育委員会との連携(「神奈川県学校・フリースクール等連携協議会」、「かながわ元気な学校ネットワーク推進会議」、「湯河原町いじめに関する調査委員会」など)
・高津区役所保護課との協働事業(生活保護家庭の中学生の学習支援事業)、子ども支援室との連携「高津区要保護児童対策地域協議会(小学校・中学校・総合教育センター・幼稚園・保育園・子ども文化センター・療育センター・保健福祉センター警察・病院・児童相談所・母子生活支援施設・障害者支援センターなどが委員として参加)」
・神奈川県青少年サポート課との連携「フリースクール・フリースペース・フリーマーケット(20 団体以上)」

対象分野

子どもの人権、オルタナティブ教育、貧困、まちづくり・子育て、環境、持続可能性

手法

自分で決めるプログラム(子どもの「やってみたい」ことに挑戦)
・日常活動…毎日の昼食づくり、自主学習、読書、絵画、カードゲーム、楽器演奏、畑づくり、工芸、手芸、染色、お菓子づくりなど
・屋外活動…プレーパークで火おこし・木登り・水遊び・泥遊び、スポーツ(サッカー、野球、卓球、バドミントンなど)など
・講座…表現活動(演劇講座、南米音楽講座、ボイストレーニング講座、ダンス講座など)。科学(実験)講座、アート講座、料理づくり講座、講座「シリーズいのち」など
・野外活動…八丈島合宿、米沢スキー合宿、森歩き宿泊体験活動、博物館・美術館観賞、他団体イベントの参加など
・ショートミーティング・お茶会ミーティング(子どもたちの「やりたいこと」「伝えたいこと」など、みんなで意見を出し合う場)

主な対象者

乳幼児、小・中・高校生、青年期の若者、地域住民、保護者など
登録者…111 人(2013 年) ※約85,600 人(夢パーク2013 年総利用者) (年間)

実施期間

1991 年~

活動の様子

化学実験 化学実験

八丈島合宿 八丈島合宿

ESDの視点

川崎市子ども夢パーク及びフリースペースえんがESDの実践共同体として呼ばれるのに相応しいのは、次の幾つかの理由がある。

第一に、国連の子どもの権利条約および川崎市の子どもの権利条例に則り、長年にわたり徹底して「子どもの最善の利益」を擁護してきたこと。

第二に、上の結果、若者のエンパワメントが顕著に見られ、国際的にも低位にある日本の子どもの自尊感情を高め、質の高い表現活動にも結実していること。

第三に、居場所全体でケアの思想が体現されていること、換言すれば、自他の価値観へのリスペクトが居場所の文化としての根付いていることである。

これらは人と人同士の、いわば社会的なESDの「柱」であると言えますが、その他、有機野菜栽培の実践や持続可能なエネルギーの導入(検討段階)という環境の「柱」、賞味期限の食品の活用や自律的な節制など、経済の「柱」も見られる。つまり、近年、ESDの重要課題として標榜されてきたコミュニティ全体(ホール・インスティテューション)での取組みとして内発的に発展してきた共同体であると言えるだろう。

こうした実践に身を置くことによって了解されるのは、本事例は、人と自然に対する〈慈しみ〉の精神と経済にも関わる〈もったいない〉スピリットに裏打ちされた生活・学習共同体であることである。

対象者の変化

フリースペースでは決まったカリキュラムはなく、一日の過ごし方は自分で決める。不登校・ひきこもりで家にいることが多かった子ども・若者たちが、フリースぺースに通い、さまざまな人たちと交じり合い、人と話したり、作業をしたり、講座に参加したりする中で、「やりたい」と思えることと出会い、挑戦するようになる。そして、「できた」と思える経験を積み重ねる中で、自己肯定感が高まっていく。また、小さな失敗を積み重ねる中で、それを乗り越える力、できないことを受け入れる力などを育む。

毎日の昼食では「つくってくれてありがとう」という声がとびかい、子どもたちは他者から感謝される経験、人から喜ばれる経験を通じて、自己肯定感を高めていく。暮らしを取り戻し、役割を担うことで自信をつけていく。そんな日常で自信をつけた子ども・若者たちは、高校や大学に進学したり、ボランティアや就労につながるなど、自分の足で次のステップを踏み出していく。

改善点

スタッフの労働条件の改善など、持続可能な実践を安定的に持続させていくための支援構造の強化が求められる。

その他

「ホール・インスティテューション」の手法として持続可能な教育の営みをつくってきた本事例は、次の図書にESDの優良実践として取り上げられてきた。
①『未来をつくる教育ESD: 持続可能な多文化社会をめざして』(五島敦子ほか、明石書店)
②『持続可能な教育社会をつくる』(日本ホリスティック教育協会編、せせらぎ出版)
③『持続可能な教育と文化:深化する環太平洋のESD』(日本ホリスティック教育協会編、せせらぎ出版)

団体概要
団体名 特定非営利活動法人フリースペースたまりば
住所 〒213-0022 神奈川県川崎市高津区千年435-10
電話番号 044-833-7562
担当者名 佐藤有樹
e-mail freespace@tamariba.org
団体URL http://www.tamariba.org
プログラムのURL

冊子事例集ダウンロード(PDF)

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