日本において、複数のNPOが入居する事務所を備える「NPO共同事務所施設」の開設が本格化してからほぼ10年が経ちました。これらの施設は、NPOの経営コストの低減と本来の活動への資源投入の増大という直接的な効果を一義的には期待されスタートしました。その後、連携や共同の促進、市民とNPOの接点の増加、コミュニティ開発へのNPOの関わりの増加、NPOによる採算可能なビジネスとしての不動産業の可能性の発見など、NPOと周囲のステークホルダーの豊かな関係の構築の可能性を感じさせる効果を持つことを強く漢字させながら今日まで存続してきました。
NPO共同施設は、日本のNPOが体験している社会との相互作用を、具体的な場を通して鮮明に見せてくれる場となっています。NPO同士あるいは多セクターとの協働、自立へとつながるNPO支援の在り方、社会デザインとしてのNPO関連の税制、NPOによるNPOのためのビジネスの可能性の萌眼など、本質的かつ今日的なNPOをめぐる諸問題を、NPO協働事務所施設を通して考察することができるのです。本報告書では、調査や施設一覧、日米比較を通して状況を概観し、NPOにかかる諸論点と施設に関する論点の関係の整理を行い、主要な論点について施設の当事者の論考を通じて掘り下げます。本報告書の情報、論考を活用して、日本における「NPO共同事務所施設」に関わる当事者が、課題や困難を整理し、既存の施設をより良い施設へと改善したり、新規の施設立ち上げを実行に移すことが、本報告書が来たいする直接的かつ第一義的な成果です。
目次
第1章<NPO共同事務所施設とは>
日本のNPO共同事務所施設の概要、近年の動向;
海外事情①ー北米におけるNPO共同事務所施設の概要;
Multi-tenant Nonprofit Centers in North America- An overview
第2章<日本のNPO共同事務所施設の現状>
調査ー「NPO共同事務所」調査報告
ケーススタディーぷらっとホーム大森、神戸本町NPOポート、みやざきNPOハウス 他
第3章<アメリカのNPO共同事務所施設から学ぶ>
海外事情①ーノンプロフィット・センターが建つまでの顛末
報告①-存在感あるサードセクター構築のための拠点を考える
報告②-NPO共同事務所施設を支える制度や組織
第4章<NPO共同事務所施設に見るNPO支援の可能性ー当事者による検証編>
ケーススタディ④-「みなとNPOハウス」の実験
ケーススタディ⑤-「NPOプラザ」第2期活動としての挑戦、ビジネスインキュベーション施設
第5章<NPO共同事務所施設に見るNPO可支援の可能性ー展望編>
“人活かし、能力活かし”でまちおこし
ケーススタディ⑥-横浜市市民活動共同オフィス
ケーススタディ⑦-NPO共同事務所施設が育む協働と自立の連鎖、
市民活動拠点としてのNPO協働事務所施設:現状と課題